研究報告

リアルタイムで見えた!3000℃の世界で起こる物質の変化 -SPring-8が照らす原子の動き、安全性の高い燃料や新規材料の開発へ- / Combined in situ quick X-ray absorption fine structure and X-ray diffraction systems for ultra-high temperature metal oxid

  • 研究報告
  • 2026.01.28

発表のポイント

  • 原子力を安全に利用するためには、ウラン燃料が高温になり溶け始めるときに、どのような変化が起こり周囲の材料と反応するのかを正確に理解することが重要です
  • 研究チームは、3000℃を超えるような超高温物質に対してSPring-8の強力なX線を照射し、その構造変化をリアルタイムで観察できる新しい技術を開発しました。この技術により、燃料や被覆管が溶ける瞬間から、化学反応を経て固まるまでの一連の過程を追跡することが可能になりました。
  • 開発した観測技術は、安全性の高い燃料開発や燃料の変性過程の理解に役立つだけでなく、航空宇宙・鉄鋼分野の新規材料開発研究にも応用が期待されます。

概要

原子力発電では、原子炉の中で核燃料が非常に大きな熱を生み出しています。通常は、冷却することで安定した状態が保たれていますが、もし冷却が止まると燃料の温度が急上昇し、周囲の材料を溶かしてしまう恐れがあります。こうした事故を防ぐためには、高温に強く、安全性の高い燃料が欠かせません。その開発には、ウラン燃料が超高温になると、どのように姿を変え、周囲の材料とどんな化学反応を起こすのかを詳しく知ることが必要です。しかし、燃料と周囲の材料が溶けて反応するような超高温での反応を観察することは困難で、これまでは理論的に推測するしかありませんでした。

研究チームは大型放射光施設SPring-8において、3000℃を超える超高温下で起こる物質の変化をリアルタイムで観察できる新しい分析技術を開発しました。試料を超高温に保ちながらX線を照射し、リアルタイム分析により反応の瞬間を捉えて、物質が「溶ける瞬間」を直接確認します。今回、模擬核燃料を用いた実験を行い、周囲の材料が高温で溶け、冷え固まるまでのプロセスについて、直接かつ原子レベルで明らかにすることに成功しています。この成果は、より安全な核燃料の開発に貢献できるとともに、航空宇宙分野などで求められる超高温に耐える新規材料の開発への応用も期待されています。

本開発は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:小口正範、以下「原子力機構」)原子力科学研究所 物質科学研究センター 放射光科学研究グループの谷田肇技術主幹、小林徹研究副主幹、小畠雅明技術副主幹、福田竜生研究副主幹、国立大学法人福井大学(学長:内木宏延)附属国際原子力工学研究所の有田裕二教授、国立大学法人東京科学大学(理事長:大竹尚登、以下「Science Tokyo」)ゼロカーボンエネルギー研究所の伊藤あゆみ特任准教授、国立大学法人東北大学(総長:冨永悌二)金属材料研究所の小無健司特任研究員、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長:小安重夫、以下「QST」)放射光科学研究センターの矢板毅研究員によるものです。

本開発成果は、令和7年10月に日本化学会欧文誌 「Bulletin of the Chemical Society of Japan」 にて発表されました。

詳細

高温環境での実験をリアルタイムに分析できる装置の概念図

Publication Details

Authors

Hajime Tanida , Tohru Kobayashi , Tsuyoshi Yaita , Masaaki Kobata , Tatsuo Fukuda , Ayumi Itoh , Kenji Konashi and Yuji Arita

Journal

Bulletin of the Chemical Society of Japan

DOI

10.1093/bulcsj/uoaf088

Online publication date

September 16, 2025

Press release online (in Japanese)

PDF: JAEA Website